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担当編集のテマエミソ新刊案内

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意識のリボン

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読後にしみじみとした感動に包まれる。
綿矢りさ最新短編集『意識のリボン』

定価:1,300円(本体)+税 12月5日発売


撮影/三山エリ



 2017年12月5日に、綿矢りささんの最新短編集『意識のリボン』が刊行されました。

 岩盤浴をしながら年配の女性二人の会話に耳を傾け、女友達について考えを巡らせる「岩盤浴にて」。〈三十歳になったばかりの私が、三十歳になったばかりの女性の話を書けば、間違いなく体験談だと思われると、これまでの経験から分かっている〉と、著者本人のつぶやきともとれる一文から始まり、思いもかけない地平へジャンプする「こたつのUFO」。子どもを狙う通り魔の噂におびえ、高校生の娘の身を案じる主婦を描いた「声の無い誰か」など、私小説風から不穏さの際立つフィクションまで、バラエティーに富んだ8編を収録した作品集です。

 2004年から2007年まで、足掛け4年にわたって複数の文芸誌に発表された短編が収められています。それはちょうど、綿矢さんが結婚、出産を経験された時期と重なります。

 短編には、生きている中で折々に感じることや、その時々の好奇心を盛り込める喜びがある、と語る綿矢さん。例えば本書の「履歴の無い女」と「履歴の無い妹」には、結婚前後の女性の複雑な心理が描かれていますが、それはご自身が結婚したときに感じたことでもあったそう。「結婚する前と後で、同じ人間であるにもかかわらず、苗字や住む場所が変わり、求められる役割が変わり、これまでの履歴が洗われるような感覚になったんです。小説を書く上では、この洗われ方が気になって」と言います。

 本書の最後に収められた表題作「意識のリボン」には、交通事故で身体から意識が飛び出してしまった女性が描かれます。生と死の境目をさまよう魂の旅。それは彼女に、そして読者である私たちに、いくつもの気づきをもたらしてくれます。

〈幸せな、愛されていたときばかりではないんだ。しかしそれは落ち込むようなことではない。人間は浮き沈みがあってこそ、深く学び、深く輝く〉

〈いままで一度も仕事を自由と思ったことはなかったが、時間は有限だとはっきり自覚して眺め渡してみれば、人生において仕事ほど贅沢に自由を使っている“遊び時間”はない。体力も気力も野望も十分あってこそ挑戦できる、社会へのゲームだ〉
(どちらも「意識のリボン」本文より)

 読後にしみじみとした感動に包まれ、著者の新たな一面をも感じさせる本書。一話ずつ、じっくりとご堪能ください。

(担当K)


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