• twitter
  • facebook
  • RSS
 
 

担当編集のテマエミソ新刊案内

  • 一覧に戻る

星に願いを、そして手を。

  • 特設サイトへ
  • 紙の本
  • 電子の本

新世代の対談が実現!朝井リョウ×青羽悠 第29回小説すばる新人賞対談 2月24日発売 青羽悠著『星に願いを、そして手を。』

定価:1,600円(本体)+税 2月24日発売





第29回小説すばる新人賞を受賞した青羽悠さんは十六歳の現役高校生。最年少での受賞となりました。今号では朝井リョウさんをお迎えして、受賞記念対談をお届けします。二〇〇九年、二十歳のときに『桐島、部活やめるってよ』で同新人賞を受賞し、デビューされた朝井さん。「小すば」の先輩でもある朝井さんは、青羽さんの小説を「外に向いている」と感じられたと言います。朝井さんは本作をどう読まれたのでしょうか。
対談場所は名古屋市科学館です。青羽さんが幼少期より通い、作品のモチーフである「宇宙」への憧れを育んだという大切な場所で行われた対談、お楽しみください。
構成=砂田明子/撮影=露木聡子



「朝井さんを意識していたところもありました」

朝井 七年前、僕は青羽さんの側でした。小説すばる新人賞を受賞して、石田衣良さんと対談をさせていただいて。自分がこっち側になる日が来るとは全く思っていなかった(笑)。

青羽 お会いするのを楽しみにしていました。今日はよろしくお願いします。

朝井 よろしくお願いします。青羽さんは、初めて小説を書いたんですよね。きっかけは何だったんですか?

青羽 きっかけというほどでもないんですが、思いついたことをメモ帳にちょっと書くということはしていたんです。

朝井 散文ですね。

青羽 はい、散文。書いていたということは、あふれ出るものとか、こぼれ出るものがあったんでしょうね。次第に、このままメモ帳に溜めているんじゃなくて、書いたほうがいいと思うようになって。

朝井 作品として書いたほうがいいと。

青羽 はい。書かなきゃと思ったんです。

朝井 散文を書いていたときから、この作品のモチーフとなる〈夢〉などは出てきていたんですか? それとも、小説を書く段階で作り直してこういう物語になっていったんでしょうか?

青羽 全部作り直しです。正直、いきなり賞を取れるとは思っていなくて……小説を書くのって挑戦だったんです。だって最初は、こんな分厚いの、書けるわけねぇだろうって(笑)。

朝井 いきなり長編を書くのは相当難しいと思います。

青羽 だから僕にとって、小説は〈夢〉。そういうものなんだということを、書こうと思ったんです。

朝井 小説を書く自分と、物語のモチーフが重なってくるんですね。ということは、小説家になるという夢はあった?

青羽 「何かになりたい」という漠然とした欲だけがありました。すぐ憧れちゃうんですよ。それこそ科学館に来たら科学者になるぞと思うし、音楽聞いたら楽器やろうと思うし、小説を読んだら小説を書きたくなる。でもこのままだと夢見がちなだけで絶対に何も起きないから、これはもう、書かなくてはと。

朝井 色々なものに憧れる中で、小説に向いたのはなぜでしょう。今って動画も簡単に撮れるし表現手段は多いですよね。

青羽 小説はワードさえあれば書けちゃうから、まずは小説をやってみようと。そうしたらどんどんのめり込んでいって、作品が一つ出来上がったという感じです。

朝井 数ある新人賞の中でも「小すば」に応募したのは理由があったんですか?

青羽 一つは三月末締め切りのタイミングがよかったんです。前年の四月から始めてこつこつやって、二月に書き上げたので。それからもう一つ……、おこがましいんですけど、朝井さんを意識していたところもありました。ごめんなさい。

朝井 こちらこそなんかごめんなさい。

青羽 ちょうどこの小説を書く前に『何者』を読んでいて、勝手に、自分に合っている賞かなと。そして朝井さんの作品がそうであるように、若い人にも読んでもらえる賞かなと思っていました。

朝井 そうでしたか。僕は一次選考を通過したら名前が発表されるという理由で「小すば」を選んだんです(笑)。多くの賞は最終選考に残った人の名前しか発表されないので。確かに、締め切りの時期もいいですよね。春にやるぞと始めれば、ちょうど一年ですからね。



「自然に大人に触れているというのは大きな武器だと思います」

朝井 読ませていただいて「外に向いている」という印象を受けました。ここ数年、若くしてデビューされた人の小説は、内へ内へと潜っていくものが多かった。つまり人間に興味があって小説を書く人と、物語に興味があって小説を書く人がいるとしたら、どちらかといえば前者の小説が多い気がしていたんです。が、この小説はその流れと違うなと。青羽さんは物語を書くのが好きなんですか?

青羽 いや、物語を考えるのはつらいです。物語は本当に神からの授かりものだと思っていて、降りてきたときに慌ててメモ、メモと。と同時に、小説は人に読んでもらわないと意味がないとも思っていて、面白い物語を書きたいという意識はありました。

朝井 苦手だからこそ、その要素が強くなっているんですね。僕は、この小説は「十六歳」が書いたんだと強く謳わないほうがいいんじゃないかと思ったほどです。色眼鏡で見られることもあるだろうから。売り出すときの話ですが(笑)。

青羽 「外に向いている」と感じられたのはどのあたりからでしょうか。

朝井 例えば物語に複数の線が走っていて、それらが響き合って、やがて一つに収(しゆう)斂(れん)していくという展開。主人公の思考や語りが繰り広げられるというよりは、それぞれ呼応して全体として動いていく。デビュー作で三つの世代が出てくるのも新しいと思いました。僕のデビュー作『桐島、部活やめるってよ』の登場人物はほぼ全員十七歳でしたし。この三世代は自然発生的に出てきたんですか?

青羽 もともと僕は高校生である自分の、もう少し上の世代を書きたかったんです。結局、少し先の未来が不安なわけです。そこを肯定したいというか、考えたいと思って。

朝井 主人公たちは大学を出て就職して二、三年経った頃ですね。その辺りの年代が不安だったということ?

青羽 そうですね。何をしているにせよ、何らかの区切りをつけなければいけない年代なのかなと想像しました。

朝井 なるほど。夢を追い続けるか、追うのをやめるか。決断を迫られる時期だということですね。その年代の不安を、物語の中だけでも肯定してあげたかった。

青羽 はい。だから僕の中で一つ筋を通したのが〈夢〉で、夢が叶う人、叶わなかった人、まだ答えを保留している人という三方向を全部書こうとしたら、自然に世代が分かれていったという感じです。

朝井 それにしても大人の世界の文化が自然に書けるのが不思議です。小説の中に「差し入れ」を持って行くシーンがありますが、僕、高校生のときに差し入れなんて文化、たぶん知らなかった(笑)。

青羽 うーん、周りに大人が多かったのかもしれません。高校の部活の関係で、大学生や社会人と関わる機会が多いんです。それから自分で言うのもなんですが、自己分析すると、気を遣う人間なのかなあと。

朝井 確かに。青羽さんの授賞式での立ち居振る舞い、皆褒めてたし(笑)。

青羽 冷静に振り返ると嫌になるんですよ。褒められるために頑張っているようで、イタいなと……。

朝井 いや、普通だと思いますよ。失礼な態度をとる必要も全くないし。

青羽 そう言っていただけると安心します。でも今も、僕が上の世代を書いていいのだろうかという不安は強くあります。

朝井 いいんです、誰を書いても。あの人と自分は立場も環境も違うから書いたら失礼かな、なんて気遣いは不要です。そうなると、究極、自分のことしか書けないですからね。自然に大人に触れているというのは大きな武器だと思います。



「夢だとか人間だとかをくどくど考えている人間なので」

朝井 プラネタリウムのある科学館が小説の舞台になっていますが、宇宙にはもともと興味があったんですか。

青羽 好きですね。この名古屋市科学館にも何度も来ていて、数年前のリニューアルが物語のヒントになりました。

朝井 プラネタリウムの描写はすごく具体的で、臨場感がありました。僕はこの小説が宇宙を題材にしているところにも、センスを感じたんです。宇宙って、潜在的に人類が引き寄せられるもので、宇宙にまつわるエピソードそのものに、読者はロマンを感じることができるから。

青羽 嬉しいです。

朝井 あと、偉そうな言い方になるけど、情報の出し方の順番を心得ているなと思いました。亡くなった館長さんにまつわる、ある〈謎〉がありますよね。その謎の核は言葉にせずに、会話のやりとりでその内容を浮き彫りにさせていく。

青羽 謎は、読んでもらうために必要な要素だけど、謎が物語の中心ではないと思ったんです。

朝井 謎は物語のエンジンなんですよね。

青羽 ああ、それです! エンジン。

朝井 エンジンだけ積んでもねえ、ということですよね、わかります。もちろんエンジンだけで十分読ませるエンタテインメントもあるけど、僕は、体に跡を残すような〝一行〞が刻まれた作品が好きです。クッキーの型を押したような一行があると、読後、後を引くんですよね。エンジンは必要だけど、それだけじゃダメだというバランス感覚をデビュー時に既に持っていることが凄いです。

青羽 たぶん、僕がエンジン以外の部分を、つまり夢だとか人間だとかをくどくど考えている人間なので。

朝井 結局は、そこが小説の肝(きも)になるんだと思います。エンジンも大事だけど、それはドラッグ的なものだから。ただ青羽さんは、エンジン以外のところを、強烈に匂う吐瀉物のようにドバっと出すのではなく、物語で美しくパッキングして読者に差し出しているんですよね。時系列を頻繁に行き来させながらも、つなぎ方はとても自然だし。だからフィクションが書ける人だなと思ったし、先ほども言ったけど、外へ向けたサービス精神を感じるんです。

青羽 そういうやり方しか思い浮かばなかったんです。小説の技術として、それしかわからないんですよ。だからこれからヤバいかもしれないです。

朝井 ここで引き出し全部開けちゃった、みたいなこと?

青羽 はい、思いつきで、全部。このあと、どうするんだと……(笑)。

朝井 フィクションをつくる回路は時代に左右されないし、薄まらない才能だと思いますよ。ただ、元来キャラクターの内面を書くことが好きなら、書くものは変わっていくかもしれませんね。これは僕自身にも言えることで、デビューから数年は、リーダビリティがないと商品価値はない! とエンタメ作家のふりをしてパッキングに励んでいたんですが、今はそうでもなくなってきているので。



「僕とは違う戦い方で、長く生き延びてほしいなと」

青羽 朝井さんは大学生でデビューされましたよね。『何者』くらいまでは、同世代を描いているという印象でした。

朝井 『桐島』が思いがけず社会学的に受け止められたときに、自分の小説の役割みたいなものを感じたんです。『桐島』は物語の内容というよりも、教室内が階層で分かれているという「スクールカースト」と呼ばれる現象に注目が集まりました。でも僕はそれを特別視していたわけではなくて、公立の共学に通う学生を書くにあたってスクールカーストに全く触れないほうが不自然だった。つまり、自分にとって自然なことを書いたら、特異なこととして受け取られたわけです。そのとき、バトンを渡された、と思いました。おこがましいけど、そのバトンを握っていたのはきっと、綿矢りささん。『蹴りたい背中』などは小説としてだけではなく、今の若者を映す鏡として社会学的にも読まれましたよね。その綿矢さんからバトンを勝手に受け取った気がして、時代の声――これを僕はモスキート音と呼んでいるんですが――を書くことを求められているんだと勝手に気張っていました。そろそろモスキート音が聞こえなくなってきたぞと思っていたところに現れたのが、あなたです(笑)。

青羽 わからないです、僕にモスキート音が聞こえているのか……。例えばスクールカーストは既に時代遅れと思うところもあるんです。自分が男子校だからかもしれませんが、あまりそういうのを見ていないんですよね。今はオタクの人はオタク同士で屈託なくやっているし。

朝井 それでいいんです、自然に思ったことをどんどん書けば、別の世代の人が勝手に特異なものとして受け取るから。

青羽 じゃあ深く考えすぎずに。

朝井 そう。結果的に、僕のバトンを渡すことになるような気がしています。

青羽 背筋が伸びました。ちゃんと、上手く、受け取らなきゃと。

朝井 でも、まずは大学受験ですよね。その後、次作は考えているんですか?

青羽 書かなきゃという切迫感が強いです。本が出て一、二か月もしたら忘れられてしまうだろうと不安でたまらないので、大学に入ったら書きまくろうと。やっぱり今回、自分より年上の人間を書いておこがましい、と感じてしまったのもあって、次は自分の周辺を書きたいと考えています。僕の友人や同級生はみんな男なので、男子校のバカな話を。

朝井 それ、すぐ読みたい。一方で僕は、青羽さんは長距離走ができるタイプだとも思っているんです。僕は「大学時代に五冊出す」とか謎の目標を乱立して、デビューからずっと短距離走をしてきました。今ちょっと息切れしてます(笑)。だから僕とは違う戦い方で、長く生き延びてほしいなと勝手に願っています。

青羽 でもたくさん書かれたから、今の朝井さんがあるとも言えますよね。

朝井 それはそう。選ばなかった未来はわからないから、今の自分に責任をもってやっていくしかないね。いずれにしろ、今日、僕が話したことは全部忘れてね。

青羽 えっ!

朝井 若くしてデビューすると大変だよとか、たくさん書けとか、色んなことを好き勝手に言われるでしょ。僕はすべて「呪い」と受け止めていたので。

青羽 なるほど……。確かに、今日の対談ということではなく、受賞してから多くの言葉をいただいていますが、素直に受け止めていることもあれば、そうでないこともあって、自分では疑い深いほうかなと思っています。

朝井 それでいいと思います。特に書く人は疑い深いほうが得です。周りをあまり気にせず、気長に頑張ってください。

青羽 今日はありがとうございました。



★書籍情報★
『星に願いを、そして手を。』
祐人、理奈、薫、春樹。四人の幼馴染みは中学時代、町の科学館に集まって、宇宙への夢を語り合っていた。だが高校卒業後、それぞれの道を歩み始める。社会人となった四人が再び顔を合わせたのは、科学館の館長が死んだ日だった。宇宙への夢を諦めた祐人と、迷いながらも研究を続ける理奈。再会が、四人をあの頃の日々へと連れ戻し、親しんだ館長の知られざる素顔が明らかになっていく。大人になった四人は過去の夢と、今の夢、そして将来の夢とどう向き合っていくのか──。十六歳の現役高校生が描く、ストレートな青春群像劇。



★プロフィール★
あおば・ゆう 2000年愛知県生まれ。
現在、高校二年生。

あさい・りょう 作家。1989年岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部在学中の2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。著書に『チア男子!!』(高校生が選ぶ天竜文学賞)『何者』(直木賞)『世界地図の下書き』(坪田譲治文学賞)『武道館』『何様』等多数。


(青春と読書3月号より転載)

特設サイトはこちら
http://renzaburo.jp/aoba/


ページのトップへ

© SHUEISHA Inc. All rights reserved.