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担当編集のテマエミソ新刊案内

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人間のしわざ

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『人間のしわざ』著者:青来有一

定価:1,500円(本体)+税 4月3日発売

「被爆のクスノキ」と「人間のしわざ」

 「せっかくですから、長崎の町を案内しながら行きましょう」。
 新刊『人間のしわざ』の校正と打合せのため長崎を訪れた担当者を、青来有一さんが連れていってくださったのが、長崎大学病院の裏手にある山王神社でした。
 「被爆クスノキ」と「一本柱鳥居」などの被爆遺構を保存している神社です。

 爆心地側の左半分が吹き飛ばされた姿のまま、今なお参道にすっくと立ち参拝客を迎えている鳥居。爆風と熱線で枯れ木同然だったにもかかわらず、奇跡的な生命力で600年ともいわれる樹齢を重ねている2本の大楠。
 2014年の大晦日、NHK紅白歌合戦で福山雅治さんが平和への思いをこめて「クスノキ」を熱唱されたときの映像で、ごらんになった方も多いかもしれません。
 いずれも、原子爆弾の凄まじさを今に伝える貴重なシンボルとなっています。

 青来有一さんは、実は作家としての顔ともうひとつ、長崎原爆資料館の館長という顔もお持ちの方。
 また、福山さんと同じく被爆二世でもありますが、「自分が原爆を小説の題材とするのは、被爆二世だからではなく、長崎という土地の記憶に想像がかきたてられるから」と、かつて「中國新聞」のインタビューで答えています。

 長崎原爆資料館から爆心地を経て、神社まで。夕暮れ時、坂の多い町を歩きながら聞いたお話とともに、被爆のクスノキと一本柱鳥居の圧倒的な姿は忘れません。
 「土地の記憶」という作家の言葉の一端にほんの少し触れたようなひとときでした。

 さて。「ジェロニモの十字架」で作家としてデビュー以来、信仰や殉教、被爆といったかの地が抱える記憶を書き続けてきた著者が、デビュー20年という大きな節目を前に刊行されるのが『人間のしわざ』です。

 かつて、教皇ヨハネ・パウロ二世がミサで語った「戦争は人間のしわざです」という言葉にとらわれている戦場カメラマンの男。アフガニスタンやイラク、ソマリアなど世界中の紛争地帯を巡り、凄惨な「人間のしわざ」の数々をシャッターにおさめてきた男の記憶からあぶりだされるのは果たして――。


 戦後70年を迎える今年、ぜひ多くの方に手にとっていただきたい一冊です。

●山王神社「山王神社の被爆の話し」
http://sannou-jinjya.jp/publics/index/17/

青来有一(せいらい・ゆういち)
1958年長崎市生まれ。長崎大学卒。
1995年「ジェロニモの十字架」で第80回文學界新人賞、
2001年「聖水」で第124回芥川賞、
2007年『爆心』で第18回伊藤整文学賞、第43回谷崎潤一郎賞を受賞。
他の著作に『てれんぱれん』『夢の栓』など。


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