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来福の家

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『来福の家』著者:温又柔(おん ゆうじゅう)

定価:1,500円(本体)+税 1月5日発売

 母親が語ってくれる幼いころの思い出話や、祖父母の故郷の懐かしい風景……たとえ自分が生まれる前のことであっても、不思議と見たことのある情景のように鮮やかに立ちのぼってくる「家族の記憶」はありませんか?

 『来福の家』には、台湾で生まれ東京で育った女の子を主人公に、家族や故郷・台湾の一族との絆を丁寧に綴った物語が二篇収録されています。読み進むうち、忘れかけていた家族との懐かしい記憶や風景を思い出し、じんわりと温かな気持ちが広がる、不思議と優しい小説です。

 第33回すばる文学賞佳作受賞作の「好去好来歌(こうきょこうらいか)」の主役、楊縁珠(よう・えんじゅ)も、対をなす双子のような作品「来福の家」の許笑笑(きょ・しょうしょう)も、在日台湾人として東京で生きる女性。台湾語、中国語、そして日本語が「適当に」飛び交う家庭で育った彼女たちは、揺らぎます。――私はいったいどこからきて、どこへ向かうのか……? 同じく在日台湾人である著者はその揺らぎを丁寧に、丁寧にすくいあげていきます。6種類もの言語表記で。

 そう。本書には実に4つの言語、6種類もの表記が登場します。漢字だけでも日本の漢字、台湾の漢字(繁体字)、中国の漢字 (簡体字)と3種類。それに、ひらがな、カタカナ。加えて、アルファベット。

 温さんのデビュー作となった「好去好来歌」を初めて読んだときのことを担当は鮮烈に覚えています。時折登場する中国語や台湾語の、「読めない漢字」を目で追う楽しさと物語に引き込まれていくうち、自分の思考が日本語のみで成り立っていることに改めて驚きました。そして不思議なことに、自分自身を揺らがされながらも、それがとっても快感だったのでした。

 <私たちを惑わせ、混乱させ、そして豊かにする――人は言葉を獲得して生きてゆくのだ。たとえ人生(rénshēng)と人参(rénshēn)の区別が難しくても!>。直木賞作家の中島京子さんが帯に寄せてくださった推薦文のとおり、新しい快感、新しい人生を拓いてくれる一冊です。

 あ! 日本語以外の言葉もたくさん登場する本作ですが、作中、必要なところには日本語訳がついているのでご心配はいりません。注目の新鋭の「新しい文学」をぜひ体感してみてください。

(編集T)


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