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担当編集のテマエミソ新刊案内

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王の逃亡

  • 紙の本

『王の逃亡』佐藤賢一

定価:1,500円(本体)+税 3月26日発売

フランス革命、西洋史に詳しくなくても、ルイ16世とマリー・アントワネットがギロチンで処刑されたこと、そしてその前に決行された王一族の「逃亡事件」は知っている方も多いと思います。
逃亡失敗後、パリに戻った王妃の髪が白髪になっていた・・・・というエピソードとともに。
そして、彼ら夫妻に次ぎ、フランス革命関連で知名度の高い人物といえば、ロベスピエールでも、ミラボーでもなく、タレイランでもない。
そう、アントワネットの愛人、スウェーデン貴族のフェルセンではないでしょうか。
小説フランス革命シリーズ5巻目となる本作には、その「ヴァレンヌ逃亡」の発端と終焉までが描かれます。

悪い人ではないけれど・・・優柔不断、不細工、無能、不能などなど、散々なレッテルを貼られているルイ16世ですが、本巻では、そんな彼の知られざる能力-----地図を的確に読める、だとか、馬車やなにやらの修理が得意、とか、数学的思考に優れた理科系男子ここにありの魅力が炸裂。
さらに、不器用ながらもアントワネットへの深い愛情や、子どもたちへの優しいまなざしがルイ視点で描かれ、家族愛の強い理想のお父さん像が浮かび上がります。
「私こそ一行の指導者であり、責任者であり、要するに家族の父親だからだ」
彼の自負心がこめられたひとことは、その後の展開を知る後世の人間の胸に迫ります。
とはいえ、ルイ16世だって生身の人間。
「妻の間男に助けられるなんて、いや、でもあれは単なる噂、アントワネットを信じたい」
という気持ちで揺れ動いたり、逃亡成功までおとなしくしていればいいものを、
「朕は王である」との自負心から来る態度が後で致命的になったり・・・・と、
「ああ、なんでまたこんなときに」という失敗を重ねるのですが、何をやってもうまくいかないときは、誰にでもあるもの、彼ら王一族の運命は、逃亡の前から決まっていたのだと思わざるをえません。

でも、と読者は思うことでしょう。
ルイは処刑されるまでのことをしたのだろうか。
そして、アントワネットは?
さらに、子どもたちの哀しすぎる末路は?

ルイ16世だって、このタイミングで王でなければ、「感じのいい王様」で済んだでしょう。
アントワネットだって、ルイに寵姫がいれば、国民の敵意をすべて引っかぶることもなかったでしょう。
フランス革命の流れが大きく変換するこの逃亡事件。
素っ気無い日記しか残していないルイの生々しい肉声によってその詳細を知るとき、どうしようもなく避けられない運命について、私たちは思わざるをえません。

(編集K)


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