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担当編集のテマエミソ新刊案内

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路傍

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『路傍』東山彰良

定価:1,700円(本体)+税

学もカネも仕事もない
船橋のビート・ジェネレーションが
房総半島を突っ走る。
これが2008年の『オン・ザ・ロード』だ。
             大森 望氏推薦

二十八のいま、輝いて見えるものなんか、なにひとつない。

第1回『このミス』大賞銀賞&読者賞W受賞の気鋭による最新作。
2002年『タード・オン・ザ・ラン』にて第1回『このミステリーがすごい!』大賞銀賞&読者賞をダブル受賞し、大森望氏に「タランティーノのスタイル+ガイ・リッチーの下世話さ+コーエン兄弟の諧謔+三池崇史のパワー」と絶賛された著者が、船橋の路上を生きる若者達の活躍を描いた連作短編集だ。このたび、ミステリーやハードボイルドの分野で活躍する新進気鋭の作家、作品に贈られる大藪春彦賞を受賞!

二〇〇八年の「オン・ザ・ロード」   大森望

 青山南の新訳で出たケルアックの『路上』改め『オン・ザ・ロード』を去年の暮れに読んだ。その直後にゲラが届いたせいか、『路上/オン・ザ・ロード』の五十年後に書かれた東山彰良の『路傍』を読みながら、主役の“俺”と喜彦が、サルとディーンにダブって見えてしょうがなかった。もちろん『路傍』のほうがはるかに下品だし、アメリカ大陸を何度も横断する『路上』と違って、こちらは房総半島からもほとんど出ない。それでも、東山彰良のスピード感あふれるイキのいい文体にはケルアックのビートが聞きとれる。そして、ひたすら走りつづけるデタラメな主役コンビは、『路上』の二人の生まれ変わりであってもおかしくない。

 二十八歳の“俺”こと矢野は、第二の人生をはじめるとしたらなにが必要かと親友の喜彦に尋ね、喜彦は「金」と答える。 〈喜彦は正しい。人生はタクシーに乗っているようなもので、ぜんぜん進まなくたって金だけはかかる。ただじっとすわっているだけで、一分一秒ごとにメーターはどんどん跳ね上がっていく。三十歳が近づいてきたら、カチ、カチ、カチ、という音がはっきり聞こえるようになる。けっきょくは金だ。〉

 かくして二人は酔いつぶれたサラリーマンの財布をくすね、ドラッグを横取りし、密輸された爬虫類や昆虫を売りさばき、稼いだカネでソープに通う。そのかたわら、二人が巻き起こす珍騒動はまさに抱腹絶倒。社長のドラ息子も硬派のヤクザも新興宗教の教祖もヤドクガエルも、二人の前ではかたなし。船橋の夜がすばらしくアナーキーな色に染まる。

 青山南によれば、ビート・ジェネレーションとは本来「だまされてふんだくられて精神的肉体的に消耗している世代」の意味だが、それを「恩寵をうけた聖者のような至福の世代」に変えるのがケルアックのマジックだとか。そのデンでいけば、三十歳間近で学もカネも仕事もない船橋のダメ男を聖者に変えるのが東山魔術。二人が刻むビートを堪能してほしい。
(おおもり・のぞみ/翻訳家)

東山彰良(ひがしやま・あきら)

1968年台湾生まれ。5歳の時に来日。福岡県在住。
第1回『このミステリーがすごい!』大賞銀賞・読者賞を受賞し、2003年『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。著書に『ワイルド・サイドを歩け』、『ラム&コーク』、『さようなら、ギャングランド』、『愛が噛みつく悪い星』、『イッツ・オンリー・ロックンロール』『ジョニー・ザ・ラビット』、翻訳に『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。


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