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文芸単行本 ニュース

ラメルノエリキサ

2016年2月5日発売
定価:1,200円(本体)+税
判型:四六判
184ページ

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『君の膵臓をたべたい』住野よる×『ラメルノエリキサ』渡辺優 緊急対談!(前編)

『君の膵臓をたべたい』で、デビュー作にして本屋大賞第2位を受賞、50万部の大ヒットを記録した住野よるさん。たまたま住野さんが自身のツイッターで、渡辺優さんのデビュー作『ラメルノエリキサ』の感想をつぶやいたことから、初対面のふたりの緊急対談が実現!




ずーっと「ドヤ顔」してるみたいな作風が好き

住野:2月に編集さんから「新人賞の作品ですごい本がある」という話を聞いたんです。「復讐にとりつかれた女子高生」という設定が気になって、早速帰ってから『ラメルノエリキサ』を買って読んで、おおー!と思って。

渡辺:そうだったんですね。推薦してくださった編集さんにも感謝です。簡単に言えば、復讐をモットーに生きる16歳の小峰りなという女の子が、ある日夜道で刺され、犯人を追う…という物語です。

住野:『ラメルノエリキサ』は……もしかしたら僕、これからちょっと失礼なことを言うかもしれないんですが、最初にこの作品を読んで思ったのは、「これを書いた人はきっと嫌な奴だな」ということでした。作者はきっと、「大学で目立つ女の子やふざけてる男の子と一緒に笑いながらも、内心『こいつらクソつまんねーな』って思っているような人」だろうなと(笑)。

渡辺:(笑)

住野:『ラメルノエリキサ』の、ずーっと「ドヤ顔」しているような作風がとても好きなんですよ。僕はバンドが好きなんですが、この作品はまるで10代のバンドのように、「俺たち最強!」という気持ちと、「俺たち完全に間違っているんじゃないか」という疑念が共存しているように感じたんです。孤独がありつつ、しかもすごくエネルギーに満ちている。……歪んだ愛情がありすぎて、この評価が正しいのかわかりませんが。

渡辺:いえいえ、そうやって深く読んでいただけてすごく嬉しいです。「ドヤ顔してる」というのは、執筆中に「ちょっとこれ面白いかも」と自分で思う瞬間がすごく好きなので、バレてる、ってことですね(笑)。

住野:『ラメルノエリキサ』には、加点方式の魅力を感じるんです。読み進めていく過程で多少マイナスの点があっても、その分、逆転の加点を積み重ねていける。「相手に100点とられても、101点取れば勝つ!」という力を感じるんです。そのいびつさや、一方向に向けた純粋さがすごく好きなんですよね。

文章の作り方が似ている

住野:ただ実は、読んだ直後は「イヤだな~」とも思ったんです。文章の作り方が、僕と似ているんじゃないかと思って。

渡辺:それはどういうところですか。気になります。

住野:たとえば猫についての描写で、「ミーナは四歳のオスだった。オスなのにミーナ。そこは猫だからしょうがない」という部分があるんですが、「そこは猫だからしょうがない」の一文は、ストーリー上は別に要らないんですよ。でもそういう一文を入れたくなるのは、すごく分かる。

渡辺:ひとりボケ突っ込み、的なところですね。

住野:間合いというか、呼吸をとってるんじゃないですか。

渡辺:そうですね。たしかにここは、後からバランスを見て付け加えた気がします。

住野:僕もまさにそうで、カスタネットで言うと「ウン」(休符)のほうをとりたくなるタイプなんですよ。他にも共通点を感じる部分はいろいろあるんですが。

渡辺:文章の書き方が似ているかもしれないのは私も少し思っていました。でも似ているからこそ、住野さんの作品を読んで、絶対私には書けない話だなと思ったんです。『君の膵臓をたべたい』も『また、同じ夢を見ていた』も、幸福や愛を真摯に目指していく物語じゃないですか。自分にはその要素はないんです。私がもし『君の膵臓~』と同じ設定で「病気のクラスメートの秘密を知ってしまう」話を書いたら、きっとこんな素敵な終わり方にはならない気が……。主人公の男の子は内向的で周りを見下していますが、それでも純粋さがありますよね。出てくる人が皆、真剣に生きている。高校生の心根の善良さが新鮮で、うらやましくもありました。

住野:ありがとうございます。「幸せについて考える」というテーマは、あえて試みているところもあります。それこそ「ドヤ」という感じで書いている部分がありますね。渡辺さんと村山由佳さんとの対談を拝読したとき、女子高生×復讐というテーマについて、渡辺さんが「こういうのがウケるだろうと思って書いた」とおっしゃっているのを見たのですが、僕もまさにこういうのがきっとウケるだろう、と思って書いた部分があります。性格悪いんで(笑)。

渡辺:ええ!そうなんですか!?(笑)

思春期の価値観を変える本

住野:渡辺さんの作品は、今の高校生たちにとって、僕が高校生だった頃の西尾維新さんとか乙一さんの作品みたいな存在として読まれていくんじゃないかと思うんです。

渡辺:それは…過分なお言葉です…!

住野:いや本当に、高校生や大学生の人たちの価値観を変える力を持っていると思いますよ。この作品は、誰もが好きな本ではないと思うんです。ある人にとっては100点だけど、ある人にとっては点数が1ケタ台、ということもあり得る。僕はそういう作品のほうが好きなんです。たとえば『君の膵臓をたべたい』を書いたとき、タイトルを変えるかどうか、かなり相談になったんです。担当さんに“結論は作者が決めていい”と言われて、「あたりさわりのないものになるくらいなら嫌われたほうがいい」と思ってこのタイトルにしました。やっぱり、ぎょっとするものの方が人の心をうがつと思いまして。

渡辺:ちなみに、『君の膵臓をたべたい』の他には、どんなタイトル案があったんですか。

住野:『桜は春に咲くことを選んだ』とか…。

渡辺:それは美しいですね。でも今のタイトルの方が、たしかに好きです。「あたりさわりのないものよりは嫌われたほうがいい」というのは私もそうで、たくさんの人に「普通に好き」と言われるより、誰かひとりにものすごく気に入ってもらえる方が嬉しいかも。

住野:ちなみに、影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?

渡辺:私、森博嗣さんがすごく好きで。

住野:ああ、それは読んでいてわかります!

渡辺:本当ですか? それは嬉しいです。住野さんはいかがですか。

住野:僕は、西尾維新さんや有川浩さんや乙一さん。ライトノベルと一般文芸の境にあるような物語を読んできました。僕も森博嗣さんは好きですね。『君の膵臓~』のなかの台詞で、
「用事もなく本屋に行くの好きなんだ」
「へぇ、なんだかスウェーデンのことわざみたいだね」
「どういう意味?」
「意味ないこと言ったんだから追究しないでくれるかな」
という部分があるんですけど、そういうところは森さんの『S&Mシリーズ』へのリスペクトです。

渡辺:たしかに、「意味なしジョーク」ですね。

住野:犀川先生と萌絵ちゃんの会話が大好きなので、その要素を入れようと。

渡辺:読んでいて、あれだ!と分かりました。住野さんの作品は会話が緻密で、会話を楽しむための会話がありますよね。私もそういう風に書きたいと思っているので、いいなと思いました。

住野:『ラメル~』の会話は、すごく音声的だと思います。他の小説を読んでいると「そんなこと、口語では言わないよ」と思うような台詞がよくありますが、そういうところが一切なくて、本当に女子高生たちがしゃべってるみたい。



感動してくれることも含め、人の感情を刺したい

住野:『ラメル~』を読んで、渡辺さんはミステリーの構造やトリックとかにはあんまり興味がないのかも?と仮説を立てていたんですが、森博嗣さんがお好きなら、そんなことは無いですね。

渡辺:自分が読み手になるときは、トリックのあるミステリが大好きなんですが、『ラメル~』を書くときには、そこはすっかりあきらめていて。犯人さえもきっちり決めずに書きはじめたんです。今後は、ミステリ部分も頑張っていきたいと思っているんですけれども。

住野:なるほど。僕の『また同じ夢を見ていた』も途中で秘密が明かされる展開なのですが、ミステリらしさは意識せずに書いていました。それに近いものを『ラメル~』に感じたんです。渡辺さんの本のレビューに、ミステリ部分が未熟でどうのこうの、と書いている人を発見したんですが、「この本の魅力はそんなところじゃない!」と言いたくて(笑)。

渡辺:ありがとうございます。この作品はミステリではないな、と自分でも思っていました。とにかく復讐する女子高生を書きたかったんです。住野さんは創作されるとき、どんなきっかけで物語が思い浮かぶんですか?

住野:『君の膵臓をたべたい』は、最初にタイトルだけが思い浮かんでいました。この言葉でどうにか人を感動させたい、と思って書いたんです。いま思えば、「こういうの奇抜でしょ」という自分なりのドヤ感もあって。渡辺さんはどうやって発想されるんですか。

渡辺:『ラメル~』は、「主人公に事件が起こって犯人を追う」という展開にしたかったんです。そういう展開ならミステリとして複雑に作らなくても書けるだろう、と。主人公は女子高生にしたかったので、“なぜ女子高生が相手を追いかけるのか”という必然性を考えていって、“復讐が好きだ”ということにしよう、と連想したんです。私自身に復讐癖はないんですが、イラッとしてやり返したいと思うのは日常的に誰しもあると思うんです。私もちょっとぶつかられたりしたときにイラッとする派なので(笑)。

住野:誰しもあることを過剰表現する、というのはいいですよね。僕の場合、気弱なので、嫌いな人がいても面と向かって悪口を言えないんです。感情でいうと、怒りや哀しみがきっかけに作品が生まれることが多いかもしれません。同時にそれは、「気弱な子たちの手を握ってあげたい」、ということでもあるんです。そう言うとすごく偉そうな感じですけれど。感動してくれることも含め、人の感情を刺したいんです。

後編はこちら





●プロフィール
渡辺優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。大学卒業後、仕事をしながら小説を執筆。『ラメルノエリキサ』で第28回小説すばる新人賞を受賞。趣味は読書と飲酒。好きなミュージシャンはガーネットクロウ。



●プロフィール
住野よる(すみの・よる)
高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第2位にランクイン。近著に『また、同じ夢を見ていた』。趣味は音楽鑑賞。好きなミュージシャンは志磨遼平(ドレスコーズ)。

『また、同じ夢を見ていた』公式サイト
http://www.futabasha.co.jp/introduction/2016/matayume/




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