はじめに

朝井リョウ、デビュー版元がおくる、
ある意味、十周年の集大成!

さまざまな有名企業からの
発注内容→本文→自己解析で構成される、
怒涛の二十作品。

頑張れ! 朝井リョウ。
頑張った! 朝井リョウ。

 ある日、某人気ミュージシャンが、「企業や番組とのタイアップのために書き下ろした楽曲のみが収録されているアルバムを発売した」というニュースを見つけた。そのとき、私の頭の中を、大変がめつい考えがぱらぱらと過(よぎ)った。
 自分も、企業とのタイアップや他の作品とコラボして書いた文章を根こそぎ集めれば、一冊分になるのではないか……!? それを実現するのは、デビュー十周年のタイミングしかないのではないか……!?
 後ろ暗い思考を駆け抜けていったがめつい座流星群は、その後も輝きを失わず、私の頭の中でちかちか光り続けた。その結果完成したのが、この本でございます。

 ただ、先述したように、作品をそのままずらりとコレクションしただけではあまりに詐欺めいているので、それぞれ、【①どんな発注を受けて書いた作品なのかを提示(テーマ、枚数など)】→【②作品】→【③発注にどう応えたのか、答え合わせ】という順番で掲載すれば、全体の構造として(主に私が)より楽しめるのではないか、と考えた。この一冊を読み終えたころには、皆さまにも、タイアップ作品二十本ノックをやり終えた感覚を味わっていただけることだろう。そもそも味わいたいかどうかは別にして。

 出版点数を重ねれば重ねるほど厳しい条件を突き付けられる機会が減り、「自由研究より、これについて調べろって言われたほうが楽かもぉ」なんて小学生の夏休みみたいなことを思うときがある。そうなると、複数の条件を提示されて「これで作品を書いてください」と言われると、ちょっと燃えてしまうのだ。特に、この本の中には、ウイスキー、たばこ、競馬、香水など、私の日々の暮らしに馴染(なじ)みのないアイテムがテーマになっている作品も多く収録されている。そうなると、自分から書き始めるような小説とは違い、これまで書いたことのないシーンや感情が生まれることも多く、単純に楽しい。私は、小説を書きながら、自分、自分、となりすぎてしまうきらいがあるので、フィクション度の高い作品に挑めるという意味で、タイアップやコラボというのは実はいいトレーニングになっていた実感がある。
 また、自分から書き始めるような小説となると、私はなぜか「心地いい読後感」より「心ざわつくような違和感」みたいなものを目指して突っ走りたくなる衝動に駆られる。その点、タイアップやコラボをきっかけに書き始めた作品にはそういう気持ちが芽生えない。当然ながら、発注元も「心をざわつかせてほしい」なんて思っていない。そんな毛色の違いも楽しんでいただけたら幸いである。

 ごちゃごちゃ書いたが、いろいろ書いたのにキャンペーン終了と共に葬られちゃうのはもったいない! という私のがめつさが生んだ一冊であることは間違いない。それでは、お楽しみくださいませ。

内容紹介

発注いただきました!朝井リョウ
2020年3月5日(木曜)予定
408P 四六判略フランス
本体1600円+税
ISBN978-4-08-771699-3

『桐島、部活やめるってよ』でのデビューから十年。森永製菓、ディオール、JT、JRA、アサヒビール、サッポロビール、資生堂、JA共済など、様々な企業からの原稿依頼があった。原稿枚数や登場人物、物語のシチュエーションなど、小説誌ではあまり例を見ないような制約、お題が与えられるなか、著者はどのように応えてきたのか!?
「キャラメルが登場する小説」「人生の相棒をテーマにする短編」「ウイスキーにまつわる小説」「20を題材にした小説」など、短編小説十四本、エッセイ六本。
普段は明かされることのない原稿依頼内容と、書き終えての自作解説も収録された一冊。

目次
  • 01森永製菓 キャラメルが登場する掌編 全三話
  • 02アサヒビール 「ウイスキーっておもしろい」を伝えられる小説 全五話
  • 03サッポロビール 「エーデルピルス」という商品の価値を広められるような文章
  • 04JT たばこが作中に登場する、「人生の相棒」をテーマにした小説 全四話
  • 05小学館「Oggi」「女性と香り」にまつわるミニエッセイ、もしくは小説
  • 06アサヒビール ビールが登場する小説 全四話
  • 07朝日新聞出版 自身の18歳のころを描写するエッセイ
  • 08朝日新聞出版 “20”にまつわる短編
  • 09KADOKAWA aikoの楽曲を題材にした小説
  • 10JRA 競馬がより面白く見られるような掌編「馬のような人の物語」
  • 11早稲田文学「若手作家ベスト11」特集への寄稿
  • 12集英社 集英社文庫40周年記念エッセイ
  • 13集英社 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と『チア男子!!』のコラボ小説
  • 14朝日新聞名古屋報道センター “ふるさと”をテーマにしたコラム
  • 15資生堂 「○○物語」と題したタイトルの小説
  • 16銀座百点 銀座にまつわるエッセイ
  • 17小学館 『アイアムアヒーロー』の世界の中で書くオリジナル小説
  • 18朝日新聞 食にまつわる書き下ろしコラム 全五編
  • 19JA共済 介護の日、年金の日にまつわるエッセイ
  • 20集英社 十周年記念本を成立させるための新作短編

著者略歴朝井リョウ(あさい・リョウ)
1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。他の小説作品に『チア男子!!』、『星やどりの声』、『もういちど生まれる』、『少女は卒業しない』、『スペードの3』、『武道館』、『世にも奇妙な君物語』、『ままならないから私とあなた』、『何様』、『死にがいを求めて生きているの』、『どうしても生きてる』、エッセイ集に『時をかけるゆとり』、『風と共にゆとりぬ』がある。

デビュー10周年記念インタビュー

早稲田大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』で第二二回小説すばる新人賞を受賞し、二十歳で作家デビューした朝井リョウさん。
同作が二〇一〇年二月に刊行されてからきっかり一〇年の道のりを、ターニングポイントとなった作品と共に振り返る。
作家自身が発案したお祭り企画本『発注いただきました!』の全貌も、詳しく語ります。

取材・文┃吉田大助
撮影┃露木聡子

朝井リョウ全17作品紹介リスト

デビュー以来刊行された朝井さんの著作を一挙紹介!

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デビュー10周年記念対談

きらきらを書き続けていく

朝井リョウさんの新刊『発注いただきました! 』は、「企業とのタイアップや他の作品とコラボして書いた文章」をまとめたもので、発注されたテーマに沿った小説、エッセイが収められていて、これまでの朝井作品とはひと味もふた味も違った味わいのある作品集です。この本をまとめるに当たり、朝井さんは「実現するのは、デビュー十周年のタイミングしかないのではないか……!?」と思われたそうです。
そこで、朝井さんが『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞したときに本誌(二〇一〇年二月号)で対談していただいた石田衣良さんと、当時と同じ、廃校となった中学校の教室で話をしていただきました。
教室内の様子はほとんど十年前と変わっておらず、まるでタイムスリップしたかのような感じで話が始まります。

構成=増子信一/撮影=chihiro.

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『発注いただきました!』朝井リョウ・著 刊行記念 オリジナルラジオ プレゼント!

『桐島、部活やめるってよ』の衝撃デビューから10年
#朝井リョウ 究極の作品集
『発注いただきました!』刊行記念キャンペーン

スペシャル音源プレゼントキャンペーンは
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発注いただきました!

発注いただきました!朝井リョウ
定価 :1,600円(本体)+税
発売日:2020年3月5日発売
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