櫛挽道守

【中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞受賞作!】

木内昇による「櫛挽道守」は、幕末の動乱の時代背景の中、木曽山中の宿場町・藪原を舞台にした家族と成長の物語です。
この長編時代小説では、お六櫛職人の家族が中心となり、時代の変化と共に家族の絆、個々の成長、そして女性の幸せについて深く掘り下げています。

物語は、中山道の宿場町・藪原に住むお六櫛職人の吾助とその家族を中心に展開します。
吾助は神業と称される腕前の櫛挽職人で、彼の長女・登瀬もまた櫛挽に魅せられ、その技術を学んでいました。
しかし、家族は長男・直助の突然の死という悲劇に見舞われ、それぞれがその悲しみと向き合いながらも、家族の形を保とうと葛藤します。
特に登瀬にとっては、家族内の役割、女性としての「幸せ」、そして櫛挽職人としての自身の道について、深く考えさせられる出来事が次々と起こります。

登瀬は18歳のとき、大地主の家との縁談が持ち込まれますが、櫛挽に情熱を注ぐ彼女に対し、父が縁談に反対します。
この出来事は、登瀬が自身の人生と向き合うきっかけとなり、彼女は自分の道を決めて歩き始めます。

途中で、江戸で修業を積んだ弟弟子・実幸や、直助の幼なじみ・源次との出会いと別れが、彼女の成長に深い影響を与えます。