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母性のディストピア

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【書評】「日本の手がかりをつかむために」
濱野智史(社会学者、批評家)

定価:2,777円(本体)+税 10月26日発売

 本書はある種の異様さを放っている。

 宮崎駿、富野由悠季、押井守、庵野秀明……。

 こうしたアニメ作家の名前を挙げていけば、宮崎駿がもっとも「国民的」に知られており、著述の比重や評価が高いと誰もが予感するはずだ。

 しかし本書はその期待を裏切る。その理由はひとことで言えば、「政治と文学」というテーマに最も適した想像力を提示した作家は誰か? という観点から一貫して書かれているからだ。

 本書は若い読者にこそ、ぜひ読んでほしい。「政治と文学」。それはすでに〈生きた〉テーマではない。いま若い人の中で、「文学」が「政治」に、あるいはその逆でもいいのだが、両者が強く関連するなど、想像もつかないのではないか。文学は文学、ただの虚構でしかない。政治は政治、それは徹底してリアルのものとしてある。つまり両者に密接な関係などない。かくいうこの書評を書いている私ですら、そう考えている(たまたま両方の「ジャンル」に興味を持つ人もいるだろうけれども……)。

 まして本書は、いわゆる「文学(小説)」ではなく「アニメ」を対象としている。「アニメに『政治と文学』だって?」普通はそう思うだろう。しかし繰り返し言う。アニメを扱うのは、まさにその「ねじれ」が最も現れているからだと本書の著者・宇野常寛は主張する。なぜ、アニメが政治でもあり文学でもあるのか?

 その答えはこうだ。「〈戦後〉はまだ終わっていない」。本書に通底するのはこの(アニメ作家たちが格闘/葛藤し続けた)メッセージだ。そして最後に本書は、「新たな〈戦前〉に突入している」とも著者は伝える。それは「政治と文学」がもはや結びつかなくなった世界だ。しかしその先行きを見るためにこそ、本書は戦後のアニメ(虚構)を徹底して読み込んでいく。日本社会の過去・現在・未来は、実は虚構を通じてしか捉えることができない。この「ねじれ」をぜひ読者には体験してほしい。

 一点、最後に伝えたい。本書は500ページを超える大部だが、むしろアニメをそれほど見てこなかった読者にも、上記作家たちの作品が分かるように丁寧な解説が加えられている。つまり、むしろ戦後のこうしたアニメをあまり見てこなかったような(おそらくは若いだろう)読者にとって、「基礎教養」を身につける書にもなるはずだ。

 母性のディストピア。私達はまだその中にいる。ユートピアへの変革は無理だとしても、そこから抜け出す手がかりを得るために、ぜひ本書を手にとってほしい。






 戦後アニメーションの想像力を駆使して、社会の突破口を創出する。
 宇野常寛・著『母性のディストピア』、刊行!

 宮崎駿、富野由悠季、押井守-戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか? 宮崎駿論、富野由悠季論、押井守論の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』ー現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?
『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。

目次:
   序にかえて
 第1部 戦後社会のパースペクティブ
 第2部 戦後アニメーションの「政治と文学」
 第3部 宮崎駿と「母性のユートピア」
 第4部 富野由悠季と「母性のディストピア」
 第5部 押井守と「映像の世紀」
 第6部 「政治と文学」の再設定
   結びにかえて



〈著者略歴〉
1978年生まれ。評論家。批評誌『PLANETS』編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)、『静かなる革命へのブループリント—この国の未来をつくる7つの対話』(編著、河出書房新社)など多数。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル—日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。京都精華大学ポピュラーカルチャー学部非常勤講師、立教大学兼任講師。



〈正誤表〉

178p
パイロットの精神力に応じて発生するバリアは核爆発をも防ぎ、挙げ句の果てには巨大化(ハイパー化)して暴走することになる(主人公ショウも、劇中でハイパー化した結果、パリをまるごと焼失させている!)。
 ↓
パイロットの精神力に応じて発生するバリアは核爆発をも防ぎ、挙げ句の果てには巨大化(ハイパー化)して暴走することになる。

249p
押井守が市田良彦を引用するかたちで展開した
 ↓
押井守が展開した


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