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夫婦の中のよそもの

  • 紙の本

【書評】クストリッツァ、器用な男――真魚八重子

定価:2,100円(本体)+税 6月5日発売

 エミール・クストリッツァといえば、カンヌ映画祭のパルム・ドールを2度も受賞した、才気溢れる映画監督として知られる。不思議なもので、世の中には映画が好きで好きで監督を目指す人のほかに、マルチな才能を持っていて、たまたま映画を撮ったら天性の力を発揮してしまった、という人物も存在する。まさにクストリッツァは後者だ。バンド“エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ”を組んで世界ツアーをし、今回刊行された短編集『夫婦の中のよそもの』といった小説も書き上げる多才ぶり。そしてどの分野でも、素晴らしい仕事を成し遂げてしまうのが、クストリッツァという分類不能な男なのだ。
 本書は特にクストリッツァの映画を観ていなくても、彼が現ボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身ということさえ了解していれば、それだけで楽しめる本だ。本作は6篇の短編で成り立っており、その内の4作がアレクサ・カレムという少年を主人公にした連作と、独立した2篇という構成である。アレクサの物語は幼少期から青年期にかけて、いたずら好きな子どもが、不良とつるんだり、女の子に興味津々になるまでを描く。子どもの目線から見た両親の姿や、酔いどれのご近所さんなどの卑近な世界と、やんちゃな冒険譚が綴られる。
 個人的に心惹かれるのは、幼少期の愛を抱き続ける「すごくヤなこと」と、残忍な戦争の中での青年の初々しい恋愛を描いた「蛇に抱かれて」の独立した2篇だ。アレクサの連作がクストリッツァの原体験を思わせるのに対し、この2作はフワッと地から足が浮いたような、創作の鮮烈さが目に浮かぶ。そしてどちらも、周囲を傷つけても仕方がないほどの愛や、残酷な宿命を切り取っている。じつは、そういった男の身勝手さや、運命の儚さはクストリッツァの映画が得意とするものだ。この短編集が気に入ったから彼の映画を観るという順番も面白い。小説のニュアンスを映像で目撃する、新鮮な体験ができるだろう。
まな・やえこ ●映画評論家

(「青春と読書」8月号より)


なお「蛇に抱かれて」は、9月公開の映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」の原作ではありませんが、同じストーリーラインをベースにした作品です。それぞれ違う要素がありますので、ぜひ両方お楽しみいただければ幸いです。(KS)

映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」
9月、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー



愛へ続く道を進め。戦火の中、ミルク運びの男と美しい花嫁の壮大な逃避行がはじまる。


世界三大映画祭を制覇したエミール・クストリッツアが帰ってきた。
圧倒的なエネルギーと、予測できないエネルギーで描かれる、
戦争が終わらない国を舞台にしたミルク運びの男と美しい花嫁の壮大な愛の逃避行。
戦争の悲しさ・おろかさを描きながらも、その中に情熱的な恋、狂騒のダンス、温かいユーモアが繰り広げられる、
『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』などで世界中を熱狂させた、エミール・クストリッツァのエッセンスが詰め込まれた到達点。

公式HP:http://onthemilkyroad.jp/
(C)2016 LOVE AND WAR LLC
配給:ファントム・フィルム




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