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担当編集のテマエミソ新刊案内

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小説ライムライト チャップリンの映画世界

  • 紙の本

喜劇王チャップリンが書いた唯一の小説を収録、映画「ライムライト」が出来るまで

定価:3,500円(本体)+税 1月26日発売

 2014年の2月4日、喜劇王チャップリンが書いた唯一の小説(映画「ライムライト」の原作)を収録した本がイタリアの出版社から刊行されるというニュースが世界中で報じられ、日本でも速報が流れました。
 チャップリンが小説を書いていた!? 読んでみたい! 軽い気持ちで原書を取り寄せて以来の2年数カ月、頭の片隅にはいつもステッキと山高帽のあの人が…。

「黄昏時の夕闇のなか、ロンドンの街灯がサフラン色の空に向けて大胆な光を放つようになった頃、19歳のテレーザ・アンブローズは人生という船から転落しそうになっていた…」
 という一文で始まるこの小説を書いた1950年頃、アメリカではマッカーシー旋風が吹き荒れ、チャップリンにとっても辛い時期でした。映画「ライムライト」完成後にはアメリカ国外に追放されてしまいます。観客を失うことへの恐怖、加えて老いることへの恐れ……精神的に追い詰められたチャップリンは、子供時代に親しんだイギリスのミュージックホールの世界を〝書く〟ことで自分を保とうとしたのかもしれません。

 映画にはならなかったバレリーナ・テリーの子供時代の情景、芸人仲間〈腕無しの驚異〉クローディアスとの語らい、ユーモラスな歌詞……この本では、ディケンズが好きだったというチャップリンの〝言葉〟に出会えます。
 チャップリンが書いた小説の断片を集めて整理し、小説を上回る文章量の解説を書いたロビンソン氏は、芸術家チャップリンの完全主義がそのまま乗り移ったかのように 映画化の過程や当時のロンドンの様子を詳述しています。ユージン・スミスのポートレイトを含む写真130点と合わせると、これは本という形態の〈ライムライト博物館〉!?

 チャップリンの妥協しない物作りの心は周りの人に伝染するのでしょうか。
 日本チャップリン協会の大野裕之さんはゲラを丁寧にチェックし、素晴らしいあとがきをご寄稿下さっただけでなく、この本が世に出るために惜しみなくお力を注いで下さいました。海外との交渉が滞りがちだったとき、〝イタリア時間〟と〝日本時間〟の壁をとっぱらってくれたのも大野さんでした。
 訳者の上岡伸雄さんと南條竹則さんは大学の同級生! 上岡さんは、少しごつごつした小説の原文を、暖かみを生かした日本語にして下さり、南條さんは20世紀初めのイギリスの演劇世界を活き活きとした日本語で甦らせて下さいました。
 そして、日本語版の装幀・レイアウト・校正・編集担当の全員にもチャップリンの熱量が伝染し……驚きの一冊になった、と思いたい。

(編集F.K)



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