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担当編集のテマエミソ新刊案内

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東京自叙伝

  • 紙の本

『東京自叙伝』著者:奥泉光

定価:1,800円(本体)+税 5月2日発売

「とりあえず、そうだな、ホッピーで」
 まだ外は明るい時間でしたが、「トンジョ」御用達という西荻窪の裏路地にある居酒屋で、奥泉さんと担当編集者が飲み始めたのでした。
「今回の『東京自叙伝』は、『新地底旅行』や『坊ちゃん忍者幕末見聞録』なんかと同じで、僕の作品の系列から言うと、「語り」の魅力でぐいぐい引っ張っていくタイプの小説。ミステリー的な仕掛けはぜんぜんないのね。時間軸もほとんど直線的。主人公の人格が変わってしまうので、単純とまでは言えないけれど、構造的には単線で新聞小説的といってもいいかもしれない」
 ここは2階にお座敷があるそうで、まだ早い時間だというのに、比較的若い女性たちが次々と階段をのぼっていきます。私達はカウンターで、すでにぬる燗が目の前に。
「『東京自叙伝』を書き終わって気付いたのは、結末が主人公の幻視の場面で終わるんだけど、あれは一種の旧約聖書の「預言者」だということ。とりわけアモスの預言。繁栄の街に滅びを幻視する。オレンジみたいな果物のことをカーツとヘブライ語で言うんだけど、それが山盛りになっているのを見たアモスは、そこにケーツ(滅び)を見るわけ。豊かなもののなかに滅びを予感する。それは東京の時代ごとの繁栄の中に、滅亡の光景を幻視する、僕の小説の最後の場面とどこか似たところがあるんじゃないかと気がついたんだ。
 僕の最初の小説「地の鳥 天の魚群」も、最後は預言者的な幻視で終わっていて、そういう意味では、ぼくはやっぱり聖書の影響ってすごく受けてるんだと思う。それはもしかしたら『神器』もそうなんだよね」

 といった会話がなされたのは、谷崎賞受賞の知らせを聞いた数日後。もう何ヶ月も前の話で、途中までこの「テマエミソ」の原稿として書き始めたものの、続きを書くのをすっかり失念していて、レンザブロー責任編集者のTさんに、とても厳しい表情で書くように厳命されたこともあり、こうして続きを書く次第なのですが、それというのも、つい先日、Twitter文学賞が本書を国内編の第4位に選んで下さったのです。
 Wikipediaを見ながら書くのですが、「Twitter文学賞事務局が運営する文学賞。他の文学賞とは異なり、作家や評論家が選考に携わらず、一般のユーザーがTwitter上で、その年に最も面白いと思った小説を投票(ツイート)することで決まるところに特徴がある」ということで、発起人の豊崎由美さんが立ち上げた今年で第5回を数える文学賞です。その第4位が『東京自叙伝』というわけです。第4位というところがやや微妙ですが、谷崎賞に続き、twitter上でもこうして評価いただけたことはとても喜ばしいことです。事務局の方々ならびに投票下さった皆様には深く感謝申し上げます。
 で、肝心の『東京自叙伝』ですが、ではいったいどんな小説かというと、これがとても説明するのが難しい小説です。「発言小町」風にまとめるとこんな感じの小説です。

初めてトピを立てます。至らぬ点もあるかと思いますが、お読みいただけましたら光栄です。

まず、私自身の現在のスペックは、東京出身で、心身ともに健康な三毛ネコです。
仕事は恵比寿のビール工場で働いています。
現在はネコなので貯金もなく、野外で寝泊まりする毎日なので、
今すぐは難しいかもしれませんが、いずれは結婚もしたいと考えていますので、
そろそろ婚活をはじめたいと思っています。
下に書いたように、前世では結婚していたこともあるので、結婚生活には向いていると思います。
希望するお相手のスペックは、20代前半で高身長、コミュ力抜群で
優しくて料理上手で年収が1000万円以上の人間の方を希望しています。
ちなみに私は専業主婦希望です。

私が悩んでいるのは、自分の幼いころの記憶のことです。
最初に自分がヘンだなと思ったのは、小さいころの地震の記憶で、
どうも大きな地震にあったのは、これが初めてじゃない気がしたのです。
前世といったらアレですが。。。
あ、あと、私はネコになる前、人間だったり鼠だったりした記憶もあるのですが、
そういう「前世?の記憶」というのは、誰でも持っているものなのでしょうか。
ふつう、生物は死んだらおしまいのはずなのに、
この私に限っては、また別の肉体を持った「私」が次々出てきて生まれ変わっているような。
さらに不思議なのは、こういう感覚は東京にいる時だけ感じることです。
なんか東京の地霊?みたいなのが憑いているっぽく感じます。

本当は、それほど深刻に悩んでいるわけではなく、
「マア、なるようにしかならないし」とも思っているのですが、
前向きに生きるため、皆さんに背中を押していただきたくトピを立てました。
こんな私ですが、どうぞよろしくお願いします。

(編集S・T)




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