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逢坂の六人

  • 紙の本

『逢坂の六人』著者:周防柳

定価:1,700円(本体)+税 9月5日発売


史上初のやまと歌の勅撰集、『古今和歌集』成立をめぐる物語。
紀貫之の忘れ得ぬ体験を描いた、小説すばる新人賞受賞第一作。


 みかどの命により、紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒とともに、初の勅撰和歌集の撰者となった紀貫之。のちに『土佐日記』を著したことでも知られる才人・貫之は、この勅撰和歌集の編纂に心血を注ぎ、序文「仮名序」を執筆する。そこには「近き世にその名きこえたる人」として、六人の歌人の名が記されていた。後世に六歌仙と称される、在原業平、小野小町、大友黒主、文屋康秀、僧正遍照、喜撰法師である。なぜ、この六人だったのか?
 個性的な歌人たちと紀貫之との交流を鮮やかに描き切った、書き下ろし長編小説。

 目次
  序 みやこの辰巳
  一 夢のやまい ———あこくそ
  二 Born to be wild ———在原業平
  三 うつろい ———小野小町
  四 樹下の墓守 ———大友黒主
  五 歌いらんかへ ———文屋康秀
  六 待ちぶせ ———僧正遍照
  終 六歌仙
  附 むかし男ありけり

「間近に見る姫君は、ものすごく美しかった。この世のものとも思えぬくらいだった。男は舞いあがった。夢中になった。人目の関もなにするものぞと、毎日のように通うた。そしたらひと月もせぬうちに姫君の父大臣や兄弟たちに知られてしまった。彼らは彼女をみかどにさしあげるために、ずっとずっと手匣(てばこ)のうちに隠していたのだ。だのに、それをどこの馬の骨だかわからぬやつに横取りされた。ものすごく怒って、姫君をよそへ移してしまった。当然だな」
「ああ……」
「男は失意にくれた。そしたら、やがて姫から文が来た。助けてください、お願い、私を連れて逃げて——。男はよし、と決心した。なんとかがんばって、ある夜姫君を邸から抜け出させた。夜闇にまぎれて……、からき駆落(みちゆき)だ」
「うんうん」
「それが——」
 業平はいったん言葉を切ると、
「ちょうどいまみたいに、桜が命の限りに咲いているころだったのだ。薄紅色の、繚乱の花盛りだ」
 貫之は想像して、ごくりと唾を呑んだ。
「夜通しの燈火とばかりに、乱れ咲いていた」

[本文より]




周防柳(すおう・やなぎ)
1964年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、編集者・ライターに。「八月の青い蝶」(「翅と虫ピン」改題)で第26回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。本書が二冊目の単行本となる。


(担当編集者より)
 2014年2月、『八月の青い蝶』で単行本デビューした周防柳さんの書き下ろし作品が、早くも完成しました。舞台は平安時代。六歌仙として今に伝わる歌人たちを、『古今和歌集』の撰者・紀貫之の幼少期の出会いとともに描いた長編小説です。ぜひお楽しみください。(担当H. K.)


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