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RENZABUROスペシャルエッセイ

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猫怪々

  • 紙の本

『猫怪々』加門七海

定価:1,300円(本体)+税 11月25日発売

加門七海氏『猫怪々』刊行記念
特別エッセイ&猫写真満載!

無類の猫好きのオカルト作家・加門七海氏が、
捨て猫(♀)と運命的な出会いをしてから3年。
多数の病持ちだった愛猫ののは、必死の看病の
甲斐あって、元気すぎる美猫へと成長した。
が、初めて過ごしたその夜から次々に起こる
不思議な現象は、今もって途切れることはない……。

文・写真 加門七海
モデル猫 のの

 ののと名付けた猫を拾って、早くも三年以上が経った。
 語る話は尽きないが、先晩、こんなことがあった。
 寝ていると、猫が布団に入ってきたのだ。
 夏の間は足下で伸びたりしていたのだが、そろそろ寒くなってきたため、人肌が恋しくなったらしい。
 目を閉じたまま、私はののを抱き寄せた。そうして、うつらうつらしながらも柔らかなその毛皮を撫でた。
 相変わらず、猫という生き物の撫で心地は最高だ。
 まさぐると、長い毛に指が埋まっていく。これがまた、なんとも気持ちいい。
 ……あれ?
 ののの毛は、こんなに長かったっけ?
 これは長毛種の手触りだ。
 ぎょっと目を開いて、布団を捲ると、私の腕に収まっていたのは、見たこともない純白の洋猫だった。
 くっきりとしたアイラインを持つ、グリーンアイのチンチラだ。
 その猫は私と目があった途端、ひらっと立ち上がり、言葉を発した。
「ありがとう」
 そして、見えない階段を駆け上るごとく、宙に姿を消した。
 撫でてくれて、ありがとうということなのか。
 茫然としたあと、ののを探すと、彼女は布団の際にいて、じっと私を睨んでいた。
 い、いや、その、浮気をしたわけじゃなくてさ……。

 翌日の晩は、猫の夢を見た。
 知人と商店街を歩いていると、大きな猫が近寄ってきた。
 迫力のある黒トラだ。
 そいつは私の足に近づき、フンフンと臭いを嗅いだのち、なんと、いきなりズボンの裾に勢いよくオシッコを掛けたのだ。
 そして、彼もまた人語を発した。
「俺の嫁になれ」
 ……は?
 そんな、いきなり言われても困るんだけど。大体、今会ったばかりじゃない。というか、あんた、嫁さん候補にマーキングするの!?
 返答に窮したまま目を覚ますと、またまた、ののが布団の際で、私のことを睨んでいた。
 い、いや、その、私のせいじゃないと思うよ……。

 夢と現と、肉体のある者と、ないモノ達と。
 猫達は一体、どこをどこまで区別して、世界を渡っているのだろうか。
 彼らにとっては、お化けも人も変わらないのか。
 そればかりじゃない。
 夢で猫にナンパされても、ののに睨まれるのならば、彼らは夢の世界をも自在に行き来していることにならないか。
 無防備に寝ている姿なんぞは、笑ってしまうほどだらしないのに、まったく油断も隙もない。
「可愛きゃいいと思ってんだろ」
 私はののを小突く。
 けど、本当は、私こそ、可愛きゃいいと思っているので、猫様の態度は改まらない。
 先日、『猫下僕同盟』という缶バッジを売っているのを見つけた。
 思わず買おうかと思ったが、買わずとも顔に書いてある、と友人に言われたので、やめにした。
 やれやれ。
 いつの間にかすっかりと、私の生活は猫様に支配されてしまったらしい。

※猫写真はクリックすると拡大します。


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