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担当編集のテマエミソ新刊案内

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宮廷の愛人(上)(下)

  • 紙の本

『宮廷の愛人(上)(下)』著者:フィリッパ・グレゴリー 訳:高里ひろ

上巻 定価:781円(本体)+税・下巻 定価:781円(本体)+税 9月17日発売

ヒロインにむかつけばムカツクほど、ページが進む

 一般的にいえば、物語の主人公に共感できるほうが、私たち読者としてはその小説に入り込めるもの。ところがこの作品は違います。はっきり言って、登場人物の一人一人のいやらしさが見え、メイン・キャラクターに至っては腹立たしいくらいです。

 そのむかつくキャラクターとはイングランド女王のエリザベス1世。16世紀、イギリスの黄金期を築いた強者です。かつてケイト・ブランシェット主演で映画化された『エリザベス』が大きな話題になったので、ご存じの方も多いのでは? この『ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人』は、王位に就いたばかりのエリザベスが、女王として、また一人の女性として揺れ動き、企み、裏切る様子を、作者フィリッパ・グレゴリーが色鮮やかに描く歴史小説の傑作です。

 1558年イングランド。異母姉メアリーが死去し(ついに、やったわ。by エリザベス)、念願の王冠を得たエリザベス。しかしイングランドは当時、財政、外交、宗教とあらゆる問題を抱えていて、エリザベスは早急に結婚し、頼れる王をイングランドに迎え入れることを要求されました。ところがエリザベスの眼中には、反逆者としてロンドン塔に幽閉されたこともあるロバート・ダドリーしかなく、ダドリーもまた、ありあまる野心を燃やしてエリザベスの傍を離れませんでした。この男には、妻がいるのに。

 この二人に、国務長官ウィリアム・セシル(かなり陰険)やダドリーの妻エイミー(イライラするほど純朴)、そのほか宮廷の人々やエリザベスの求婚者がからみ、驚くほど濃厚な宮廷人間ドラマが展開されます。そして「王冠も欲しい。でも愛も欲しい」という強欲なエリザベスは、イングランドをかつてない危機に導くことになり、究極の選択を迫られます……国か? 男か? 彼女の出した結論は感心するほど狡い、いや、スケールの大きなことでした。

 登場人物のあまりの人間くささに、私たち読者は言葉にできない苛立ちを覚えつつも「人の不幸は蜜の味」的な本能に突き動かされて、一気に読み進めてしまいます。そして気づくと、少しだけイングランドの歴史に強くなっていたりします。「私はこんな人間でなくて良かった……」と安心もできます。

 何を隠そう、担当の編集Dは歴史小説が苦手でした。全く興味も涌きませんでした。でも、この『ブーリン家の姉妹』シリーズに出会ってから、考え方が変わりました。この腹立たしいほど引きこまれる面白さをぜひ、味わってください。さらにお気に召しましたら、シリーズ既刊『ブーリン家の姉妹』(上・下)、『ブーリン家の姉妹2 愛憎の王冠』(上・下)も、どうぞよろしくお願いします!

(編集D)


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