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おっぱいとトラクター

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『おっぱいとトラクター』著者:マリーナ・レヴィツカ 訳:青木純子

定価:800円(本体)+税 8月20日発売

アクの強い登場人物が織り成す、奥の深い家族ドラマ

「朗報だ。ナジェジュダ。結婚するぞ!」
冒頭、84歳のおじいちゃんニコライが次女のナジェジュダ(49歳)に再婚宣言するところから始まるこのお話。ウクライナ移民として渡ってきたイギリスで半生を送り、妻に先立たれること2年。おじいちゃんの再婚相手はナントかつての祖国ウクライナからやってきた50歳近く年下のヴァレンチナ。豊満なおっぱいが今にもこぼれおちそうな露出度大の洋服で、迫力ボディを見せつけている女性です。

「パパの財産とイギリスのパスポートやヴィザ目当てに違いない!」慌てたナジェジュダは姉のヴェーラ(59歳)に緊急連絡。実はニコライおじいちゃんは気が強くて弁のたつ長女ヴェーラが大の苦手で、何とかナジェジュダを言いくるめて味方につけ、再婚話を認めさせちゃおうという魂胆なのですが、甘い甘い。亡くなった母の遺産をめぐる争いで折り合いの悪かった姉妹もこのときとばかり、ガッチリとタッグを組み、あの手この手で再婚させまいと妨害作戦が始まるのです。

 著者のマリーナ・レヴィツカ氏は、本作で58歳にして小説家デビュー、という遅咲きの大型新人です。両親がウクライナ移民で自身はイギリス育ち、父親はトラクターのエンジニアなど、『おっぱいとトラクター』の語り手でもある次女ナジェジュダと共通点があり、自伝的要素が多いと思われるストーリーが、イギリスを中心とするヨーロッパを中心に多くの国で受けて、世界で37ヶ国語に翻訳され、合計200万部を売り上げる大ヒットにつながりました。

 読みどころはなんといっても、テンポがよく皮肉がピリピリと効いた会話。財産目当てだってかまうもんか、ワシが幸せになれれば、とヴァレンチナのおっぱいしか目に入らない欲ボケおじいちゃん。ふだんはおじいちゃんのことなど見向きもせず自分たちのことしか考えていないくせに、父親の後妻におさまろうとするヴァレンチナに対しては、一挙手一投足をあげつらい、決して理解しようとしない娘たち。そして、"おっぱい美女"ヴァレンチナは、新しい人生、豊かな生活をつかむために必死。カタコトの英語で"貧乳"小姑姉妹とやりあい、一歩もひかず……。それぞれに強い個性を持ち、自分のことしか考えていない人々の、見苦しい家族喧嘩。でも、日本でも決して人事ではない、遺産争いや介護の押しつけ、老いた親の再婚問題が細かく描かれていて、何だかとても身近に感じてしまいます。もう絶対解決不可能!と思える争いも、読み進めるうちに意外な展開を重ねて……。最後には、ああやっぱり家族っていいものだなと、ほんわか温かい気持ちにさせてくれるのです。それでいて、合間にさりげなくはさみこまれるウクライナ移民が経験してきた悲惨な歴史や過酷な現実がまたスパイスとして効いています。さらっと楽しく読めて、深い読後感の残る『おっぱいとトラクター』。ぜひぜひお読みください。

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(編集Y)


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