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担当編集のテマエミソ新刊案内

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議会の迷走

  • 紙の本

『議会の迷走』佐藤賢一

定価:1,500円(本体)+税 9月25日発売

 えー、暫定担当のC塚です。担当のKが育休中につき、代打をさせていただきます。

 佐藤さんから伺った話ですが、今の日本の状況はフランス革命直前のフランスに、酷似しているのだそうです。国民のほとんどが飢えて不幸なのに、一握りの特権的な人々だけが報われ続ける。政治は無力で、大臣ばかりが交代する。あげくに、選挙が行われるが結局は革命が起きる。

 おもしろいなと思ったのは、その時期、作家志望者が激増した、ということです。あのミラボーも小説らしきものを書いていたとか。今のままの体制では這い上がることはできない、と思うと、人はどうやら「一攫千金」「9回裏逆転ホームラン」を狙おうとするらしい。作家業は、そんなに甘くはないのですが、そうしたドリームを人に見せてしまう職業なのでしょうね。「小説すばる新人賞」への応募の多さを見ても、ああやはり、今の日本は革命前のフランスなのだな、と思ってしまいます。

 結局、自分たちの手で自分たちの居場所は作るしかなく、フランスの人々は自らの手を血で汚して、自由を手にいれることになります。自由への道のりは遠く、その代償は大きいものでした。革命は起きたけれど、順風満帆でなかったのは、歴史が示すとおり。人間というのは、学べない生き物のようです。

 民主党の圧勝がフランス革命と比べられるようなものなのかはともかく、国民の中に「変革」を求める気運が、いつになく高まった結果であることは間違いないでしょう。

 今回、革命の成功に酔いしれる議会の中で、ひとりミラボーだけが、冷静な分析をします。このままでは、人民にとって最も恐れるべき独裁政治が始まりかねない。ミラボーは言います。「私の政治は、ほどがよいのだよ」と。あくまで理想を追うロベスピエールには、それがわかりません。独裁者による圧政の苦しさをなによりも骨身に沁みて知っている我々は、独裁者にはなりえない、と主張するロベスピエール。そんな彼に、ミラボーは言います。「もっと自分の欲を持ちたまえ。さもないと独裁者になるぞ」。なぜなら。

「人間は君が思うより、ずっと弱くて醜い生物だからだよ」

 しかし、そう助言するミラボーの命は、すでに尽きようとしていたのでした。
今の日本に、ミラボーのような政治家は果たしているのでしょうか。寄らば大樹の陰、他力本願の日本人(私だけかもしれませんが・笑)の心の奥の奥まで見据えた上で、国のはるか未来にまで思いを馳せることのできる政治家が。

 理想主義の陥る罠。フランス革命は、危うい局面にさしかかります。このⅣ巻が出るときに、日本の政治が大きく変わった、というシンクロニシティを考えると、重いものを感じます。我々も、今こそ自由と責任について、もっと深く考えなければなりません。歴史に「他人事」はありえないのですから。
(編集C塚)


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