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担当編集のテマエミソ新刊案内

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聖者の戦い

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『聖者の戦い』佐藤賢一

定価:1,500円(本体)+税 3月26日発売

フランス革命の全貌を描くこちらのシリーズ、昨秋発刊されたI、II巻は、大反響を呼び起こしていますが、いよいよ待望のIII巻が発刊されます。
ミラボー、ロベスピエール、デムーラン、ダントン、マラ、そしてルイ十六世にマリー・アントワネット……。
通史を小説として描くにあたって佐藤氏が選択したのは、革命を彩るスターたちが重なっては推移する群像劇スタイル。複合的な側面を併せ持つフランス革命を描ききるにはこれしかない、と思われたとのことです。

確かにみんな揃いも揃って個性的で曲者ぞろい、彼らが残した新聞、文献、発言なども「俺を書け~、俺を忘れるな~」と訴えかけるかのようで、それに耳を傾けながら、なおかつ、その言葉の強さと重さに流されずに描くのに苦心されているとか。
ひと月に数十枚執筆するだけで、数キロ痩せてしまうというのですから、時空を軽々と飛び越え、彼らがいかに凄まじいエネルギーを発散しているかの証拠でしょう(しかし担当編集が痩せないのは……なぜ?)。

本巻の主要登場人物の一人はタレイラン。
貴族と市民と対立の陰に隠れ、これまで追及を逃れてきた特権的身分の聖職者たちが、いよいよ革命のターゲットとなっていきます。
それはそうです。貴族の所有地よりも、教会や修道院が占めている荘園の方が遥かに広大で、富を独占し続けてきたわけですから。
この教会改革を推進しようとするのが、自らもオータン司教という高位聖職者であるタレイランです。
なぜ、他でもない聖職者自身の彼がこうまでして教会の破壊を進めようとするのか、そして、何より、宗教という心の問題に国家が手を加えていいのか。
いわゆる「教会改革」抜きにしてフランス革命の全貌を語ったとは言えないのですが、
これは日本人にほとんど知られていない側面のひとつでした。この部分に焦点を当てた日本人作家は佐藤さんが初めてなのではないでしょうか。

さて、当の聖職者たち。神の代理人として高邁な思想を持ちつつ、公私ともに清貧な日々を送る人々ばかりでないのは、いまさら言うまでもありません。タレイラン自らが「神なんて本気で信じてるわけではあるまい」なんて、他者に向かって言っているくらいです。丸々と肥えた身に豪華な僧衣を纏った聖職者たちが、我が身を守るため「本音」と「建前」の間で右往左往するその様はほとんど喜劇、と言ってよいでしょう。
タレイランは、自分の目的遂行のためにどう画策するのか。
これに平行して、ミラボーは、ロベスピエールは、デムーランは何を考えどんな動きをしていくのか。
本巻も隅から隅まで読み応え満点です。
(編集K)


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