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ベーシックインカム 井上真偽 テクノロジーも謎も、進化する──。心揺さぶるSFミステリ短編集。ベーシックインカム 井上真偽 テクノロジーも謎も、進化する──。心揺さぶるSFミステリ短編集。

内容紹介

遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカム──
来たるべき世界に満ちるのは、希望か絶望か。
「未来」に美しい謎を織り込んだSFミステリ短編集。

<全5編収録>
日本語を学ぶため、幼稚園で働くエレナ。暴力をふるう男の子の、ある“言葉”が気になって──(「言の葉(コトノハ)の子ら」
推理作家協会賞短編部門ノミネート作)
豪雪地帯に取り残された家族。春が来て救出されるが、父親だけが奇妙な遺体となっていた。(「存在しないゼロ」)
妻が突然失踪した。夫は理由を探るため、妻がハマっていたVRの怪談の世界に飛び込む。(「もう一度、君と」)
視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術の被験者に選ばれた。紫外線まで見えるようになった彼女が知る「真実」とは……(「目に見えない愛情」)
全国民に最低限の生活ができるお金を支給する政策・ベーシックインカム。お金目的の犯罪は減ると主張する教授の預金通帳が盗まれる。(「ベーシックインカム」)

ベーシックインカム

ベーシックインカム井上真偽
2019年10月4日発売
定価:本体1400円+税
ISBN978-4-08-771679-5

著者プロフィール
&色紙

現実がSFじみてきました。その中で人はどう変わるのか。それとも変わらないのか── そんな想像を楽しんでもらえれば嬉しいです。 井上真偽

井上真偽(いのうえ・まぎ)
神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』で第51回メフィスト賞を受賞してデビュー。
第2作『その可能性はすでに考えた』が、2016年度第16回本格ミステリ大賞の候補に選ばれる。
その続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』は、「2017本格ミステリ・ベスト10」の第1位となる。さらに「ミステリが読みたい!2017年版」「このミステリーがすごい!2017年版」「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にもランクイン。2017年度第17回本格ミステリ大賞候補、「読者に勧める黄金の本格ミステリー」にも選ばれる。同年、本作収録の「言の葉(コトノハ)の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門候補に。2018年には『探偵が早すぎる』が滝藤賢一、広瀬アリス、水野美紀出演でドラマ化され話題となる。

応援コメント

三省堂書店有楽町店 内田剛氏
鮮烈な驚きに満ちた物語だ! AIに『面白い小説』を学習させようとしたら、この一冊を読ませるだけで十分だろう。
啓文社ゆめタウン呉店 三島政幸氏
十年後の本格ミステリの姿を見せてくれている──。ラストの仕掛けにも唸らされた。
紀伊國屋書店天王寺ミオ店 朝加昌良氏
背筋が震える。著者には未来を見通す力があるのだろうか。
紀伊國屋書店横浜店 川俣めぐみ氏
最後の最後に伏線回収! いや伏線からの逆!? という展開に驚いた。すごかった!
リブロプラス 商品部 昼間匠氏
AIを中心に予想を上回るスピードで技術革新が続き、不安が増す中、「少し先の未来」について考える事の重要性に気づかされた。
紀伊國屋書店仙台店 齊藤一弥氏
作中で書かれている技術が実現した数十年後、この本は「予言の書」として話題になっているかもしれない。

書評

大森望

SF設定の
エモーショナルな
本格ミステリ

《その可能性はすでに考えた》シリーズで知られる謎と論理の魔術師・井上真偽が、まさかこんなタイトルのミステリを出そうとは。

 ベーシックインカム(最低給付保障)とは、作中の説明を借りれば、「国民の一人一人に、最低限の生活ができるレベルのお金を一律無条件に給付しよう、という社会保障制度」のこと。とはいえ、本書は社会派サスペンスでも経済学ミステリでもない。全五話のうち、表題作となる最終話には、たしかにジョン・スチュアート・ミルやクリフォード・ヒュー・ダグラスの名前が出てくるし、事件現場は大学の経済学研究室だが、その核心は、「オートロックのドアと暗証番号で守られた金庫からいかにして通帳が盗まれたか?」という謎。基本はあくまで本格ミステリなのである。

 他の四話は、第70回日本推理作家協会賞短編部門にノミネートされた「言の葉(コトノハ)の子ら」をはじめ、近未来の日本を背景に、新たなテクノロジーが人間の日常生活にもたらす変化を描く。AI、遺伝子操作、VR、身体増強……。「それってSFなんじゃないの?」と思うところですが、SF的設定がミステリ的な謎の解明と密接に結びついているのが本書の最大の特徴。

 たとえば、「もう一度、君と」では、失踪した妻が直前まで体験していた観賞型VRソフトが焦点になる。〈鎌倉怪談〉シリーズの新作だという問題のタイトル〈雪之下飴乞幽霊〉は、いわゆる〝子育て幽霊〟もののバリエーションで、夜ごと飴屋のもとに飴を買いに来る女の幽霊の物語だが、映画のように外から見るだけでなく、登場人物の目になって体験することもできる。ですます調で語られるこの作中作がすばらしくよく書けているだけでなく、VR技術を介することで、古典的な怪談が現代人の心の謎と鮮やかに結びつく。

 技術は革新されても人間の情は変わらない。驚くほどエモーショナルな連作集だ。

試し読み

「もう一度、君と」

 それは、夜光虫の燈だったのでございます。

 女が、鼻緒のほつれた下駄を脱ぎ、境の曖昧な夜の海にいざ踏み入らんとしたところ、突如わっと目の前の闇が青く光り、それが女には盆の人魂めいて見えたものですから、女ははっと驚き立ちすくみまして、ずっとその、此岸と彼岸の狭間じみた光景に、怖気づきながらも魅入られていたのでございます。

試し読みを読む

ベーシックインカム

ベーシックインカム井上真偽
遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカム──
来たるべき世界に満ちるのは、希望か絶望か。
「未来」に美しい謎を織り込んだSFミステリ短編集。

2019年10月4日発売
定価:本体1400円+税
ISBN978-4-08-771679-5

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